ノー・プロブレム! インクレディブル・インディア!

インドに来て最初の2週間、何故かインドに来たという実感がわかなかった。ボンベイは大都会で人の多さに辟易としてしまったし、ゴアではロシア人に囲まれていたし、ハンピはグレート・ジンバブエ遺跡を思わせるような場所だった。チャイを飲んでも、カレーを手で食べても、いまいちピンとこなかった。

ところがバラナシに来て強烈にインドを実感してしまった。人間より大きな顔をして道の真ん中を歩く牛。その糞、ゴミがいたる所に散乱した道。通りには野良犬も多く、電柱には猿。宿を出てすぐの通りは狭い上に薄暗く、ゆるやかに傾斜していて、一面牛の糞と何かで濡れていて、石畳でできているので滑りやすい。底の磨り減ったビーチサンダルでは危険だ。こんな所でうっかり滑って転んで尻もちをつきたくない。メインガートへと通じる道には聖なる河ガンガーで沐浴をするためにバラナシにやってきた人々が行列をなしている。そしてその巡礼者たちから施しをもらおうと物乞いも階段に列をなして手をのばしている。ガートの最前列では、男性は腰布一枚、もしくはパンツ一枚といったかっこうで、女性はサリーを着たまま頭から薄茶色い水をかぶっている。泣き叫ぶ子供を無理矢理頭が完全に水中に隠れるまでガンガーに沈める母親もいる。

なんじゃこりゃ。インクレディブル。ちょっと小ぎれいなカフェができたところで5年前と何も変わってないじゃないか。これこそがインドだと強烈に実感してしまった。